寒天培地への応用
寒天は、微生物培地において極めて重要な役割を果たします。その主な価値は、微生物の生育のための強固で安定した支持表面を提供することにあり、微生物学的研究と応用の可能性を大きく広げます。以下では、寒天培地の主要な用途と利点について詳しく説明します。
分離および純粋培養のための固体表面の形成:
主な機能:これは寒天培地の主要な用途です。寒天(通常1.0~1.5%の濃度)を加熱して栄養溶液に溶解し、冷却後に半固体のゲルを形成します。
微生物分離:異なる微生物(環境サンプル、臨床検体など)を混合すると、単一の微生物細胞または胞子が固体培地の表面に画線、塗布、または流し込みを行うことで、寒天表面の固定された位置で増殖し、目に見える孤立したコロニーを形成します。コロニーの形態、大きさ、色、質感などは、微生物の同定と識別において重要な基礎となります。
純粋培養の取得:単離された単一コロニーは、理論的には微生物細胞に由来し、採取して新しい培地に移すことで純粋培養を得ることができます。これは、その後の研究(生理学的・生化学的研究、遺伝学的研究、薬剤感受性研究など)の基礎となります。
物理的・化学的性質を保つための不活性担体として:
化学的不活性:寒天自体は、ほとんどの微生物によって分解・利用されません。これにより、以下のことが保証されます。
微生物の増殖に必要な栄養素は、様々な添加栄養素(ペプトン、牛肉エキス、糖類、無機塩、成長因子など)によって完全に供給されます。
寒天は培地中の成分と大きく反応せず、実験結果に影響を与えません。これは、初期に使用されていたゼラチン(多くの微生物によって液化される)に対する寒天の大きな利点です。
寒天培地表面に生育するコロニーの形態学的特徴は、微生物そのものの特性を真に反映します。
特殊な培養用途:
ディープアガー:試験管内で融解後、約45℃に冷却し、固めた寒天培地です。主な用途:
嫌気培養:穿刺接種により、内部に嫌気環境を形成します。
細菌の運動性を観察:運動性細菌は穿刺線周辺で増殖します。
酸素要求量の測定(チオグリコール酸流動培地など)。
半流動性寒天培地:寒天濃度が低く(約0.3~0.7%)、柔らかく流動性のある状態です。
主に細菌の運動性を検出するために使用されます。運動性細菌は穿刺線から周囲へ雲状に増殖しますが、運動性細菌は穿刺線上でのみ増殖します。
特殊研究:
プラークアッセイ:ファージは、宿主細菌叢(寒天培地上で増殖)で覆われたプレート上の細胞を溶解し、透明な斑点(プラーク)を形成します。この斑点は、ファージの分離、計数、力価測定に用いられます。
抗菌薬感受性試験:K-B濾紙拡散法(寒天培地拡散法)などでは、細菌を含んだ寒天培地を基準として、薬剤濾紙周囲の阻止円の大きさが薬剤に対する微生物の感受性を反映します。
コロニーハイブリダイゼーション:寒天培地上のコロニーをメンブレンにin situで転写し、核酸ハイブリダイゼーション分析によってクローンスクリーニングを行います。
勾配プレート(抗生物質勾配、pH勾配など):寒天は固体であるため、安定した物理的・化学的勾配を形成できます。
倒立培養:固体寒天培地は、凝縮水がコロニーに滴下するのを防ぐため、倒立培養に適しています。
コロニーの特徴的な成長を促進する:
固体表面は微生物の拡散を抑制し、限られた空間で微生物が大量に増殖することを可能にし、特定の形態学的特徴を持つコロニーを形成します。これらの特徴は、分類と同定(平坦、隆起、凸状、円形、糸状、根状、しわ状、湿潤、乾燥など)の重要な指標となります。
微生物の計数:
混釈平板法:希釈した微生物懸濁液を、溶かして冷却した寒天培地と混合し、平板に流し込み、固化後に培養します。コロニー数に希釈液を掛け合わせたものが、元の溶液中の生菌数です。
塗抹平板法:固化した寒天培地に希釈液を塗り広げ、培養後にコロニー数を計数します。
寒天の利点:
理想的な融点・凝固点:一般的な市販寒天は85~90℃以上で融解し、32~40℃程度で凍結します(凝固点は通常40℃未満です)。そのため、以下の利点があります。
加熱・溶融が容易で、培養液の温溶液に混合・滅菌できます(121℃での高圧蒸気滅菌など)。
ほとんどの微生物の生育温度よりも高い条件で凍結(冷却)できるため、微生物を熱傷させることなく、プレートへの注入や試験管への充填に便利です(凝固後、培養温度まで冷却すれば接種できます)。
培養温度で固体状態で安定です。
熱可逆性:物理的性質に大きな変化(ブレークポイントの形成など)を生じることなく、繰り返し加熱、溶融、冷却、凝固させることができ、再利用や再注入に便利です。
透明性:純粋な寒天ゲルは透明なので、コロニーの形態や培地の色の変化(指示薬の色変化円など)を観察するのに便利です。 高い保水性:培地中の水分を閉じ込め(95%以上が水分)、微生物の生育に必要な水環境を提供します。
生理学的不活性:ほとんどの微生物によって分解・利用されず(ごく少数の特殊な微生物のみが分解可能)、培地の組成に影響を与えません。
適切なゲル強度:適切な濃度の寒天ゲルは、コロニーを支えるのに十分な硬度を持ちながら、脆すぎません。固形培養の場合、1.5%の濃度が一般的な基準です。
相対的安定性:通常の培養条件および保管中は安定しています(ただし、光と乾燥を避けて保管する必要があります)。
純度制御可能:現代の精製寒天は、不純物(無機塩や残留化合物など)が少なく、微生物の生育を阻害することはほとんどありません。要約:寒天は、その独特の物理的・化学的特性(特に理想的な凝固/融点、熱可逆性、高い不活性性、良好なゲル強度と透明性)により、微生物の固体および半固体培地の調製における絶対的な中核凝固剤となっています。寒天がなければ、微生物の簡便な分離・精製技術、コロニー形態観察、定量計数法、そして様々な重要な実験技術(薬剤感受性、プラークアッセイ、運動性検出、クローンスクリーニングなど)は実現できません。寒天は、微生物学を液体培養から固体培養の時代へと推進する鍵となる物質であり、現在でも微生物学研究室にとって欠かせない基礎材料です。
代表者
高橋 勉
所在地 〒301-0000 茨城県竜ヶ崎市5553番地6
電話番号 TEL: 0297-62-9177 FAX: 0297-62-9177
E メール
hibrdg@kke.biglobe.ne.jp
振込先 常陽銀行 竜崎支店
みずほ銀行、取手支店
三井住友銀行、取手支店
ご確認事項 金融機関への振込み手数料はお客様負担でお願いします
お支払期限
ご依頼日から7営業日以内
営業時間
ネットでの注文は24時間受け付けております!
店舗へのお問合せにつきましては、下記の時間帯にお願いします
平日 10:00-18:30 ※土日祭日はお休みをいただいております。
寒天購入、日本円決済、現地配送ポリシー